アルベルト・ジャコメッティの作品の最高額は94億円!矢内原伊作との関係は?

アルベルト・ジャコメッティはスイスの彫刻家です。
2018年には素顔を描いた映画「ジャコメッティ最後の肖像」も公開されています。
今回はそんな天才と呼ばれた芸術家について見ていきましょう。

アルベルト・ジャコメッティ プロフィール

生年月日 1901年10月10日(1901年~1966年)
国籍   スイス

表現媒体 彫刻、絵画、ドローイング
配偶者  アネット・アーム
父    ジョヴァンニ・ジャコメッティ
     (スイス印象派の画家)
弟    ディエゴ・ジャコメッティ
     (兄の助手やモデルを務める、のちに家具製作者となる)

スイスのグリゾン州ボルゴノーヴォに生まれ、隣村のスタンパで育つ
(3000メートル級の山2つに囲まれているため、12月初めから2か月間は太陽が昇らない!)

1919年高校卒業後にジュネーヴ美術学校入学
しかし数日で絵画に見切りをつけた

その後ジュネーヴ工芸学校でモーリス・サルキソフのもと彫刻を学ぶ
戦後のフランス彫刻界において最も高い評価を得ている

活躍した時代背景

1930年代ジャコメッティはパリを代表するシュルレアリストたちの活動に参加していました。
シュルレアリスムとは超現実主義。
「現実離れ」などの意味で使われている「シュール」の語源です。

夢や無意識下にあるものや偶然の機会などにおいて、普段気づかない現実を超えた現実を表現したもの、という意味です。
日本で一般的に使われているシュールとは違った意味ですね。

当時最高額の94億円で落札

ジャコメッティの作品「歩く男」は、2010年2月にロンドンで行われたオークションで94億円で落札されています


画像出典元:AFPBB

これは美術品として当時過去最高額です。
予想落札額は26億だったとのことですが、電話で参加した匿名の人物が予想の3倍を上回る金額で落札しました。
電話一本で94億円の買い物をするとは想像できないですよね。

歩く男は1961年に制作された等身大の男性像で、約25年ぶりにオークションに出されたジャコメッティの歩く男シリーズの一つです。

作風は?

ジャコメッティの作風はとても特徴的で一度見たら忘れられないと言われています。
極限まで細く長くされた人間の形。
ジャコメッティは芸術家として初期から晩年に至るまで、「人物をどうしたら見える通りに表現できるのか」ということに挑み続けました。

画像出典元:ArtPedia

あれが見える通り?あんな細長い人なんているの?と見る人は言います。
それに対しジャコメッティは
人間の空虚さを表すとこうなるんだ」と答えました。

ジャコメッティは34歳のとき画商のピエール・マティスに手紙を送っています。
その手紙の内容は、

・見たものを記憶によって作ろうとすると彫刻がどんどん小さくなっていく
・小さくなければ現実に似ない
・デッサンを重ねることによりもっと大きな彫刻を作りたいと思うようになったが、今度は驚くことに細長くなければ現実に似ない

というものでした。

要するに現実を表そうとすれば小さくするしかなく、葛藤の末、細長くすることで収束していったというものでした。
ジャコメッティの初期の作品は非常に小さく、なんとマッチ箱に入ってしまうほど。

ジャコメッティの言う見えた通りとは外観的なものではなく「人間の弱さや空虚さを含めたもの」で、ジャコメッティにはそれが見えるということ。

なぜ評価されているのか?

ジャコメッティの作品が評価されているのは、深い精神性と強烈なオリジナリティをもっているからです。

極限まで無駄を削ぎ落し大きく縦に引き伸ばされた作品を見た人は様々な感情を持ちます。

画像出典元:HILLS LIFE

空間が変容するような体験をした
生と死の深淵を除いたような気がする

という感想を持つ人もいました。

ジャコメッティの作品は初期のころは表面が滑らかだったのが後期になるとボコボコに。
これは粘土で原型を作ってその型を取ってブロンズを流し込む、という作成方法だったため。
もともとの粘土がボコボコしていたということです。

このボコボコした表面の処理にリアリティを感じて、鬼気迫る怖さを感じ作品の魅力に憑りつかれている人もいるようです。

矢内原伊作との関係は?

矢内原伊作(1918年~1989年)は日本の哲学者です。
実存主義の立場から哲学を研究していました。

矢内原はジャコメッティの創作に大きな刺激を与えていた存在。
1956年~1961年の間に繰り返しフランスにわたりジャコメッティのモデルを務めています


画像出典元:Mercure des arts

矢内原が生前にまとめた書籍「ジャコメッティとともに」もあります。

画像引用元:古書象々

まとめ

ジャコメッティは超夜型人間で、深夜から朝方まで寝ないで制作するスタイルでした。
創造と破壊を短時間で繰り返すため、アトリエは戦場のようと言われていたそうです。
なので現在まで残っている作品の相当数は、ジャコメッティが朝方寝ている間に「こっそり鋳型をとって壊される前に作品を回収した弟の働き」によるものといわれています。
ジャコメッティの弟グッジョブですね。

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